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本会について

会長挨拶

(一社)京都府臨床心理士会は、京都府内に在住、在勤または在学して活動する臨床心理士が運営する一般社団法人です。さて、2017年に一般社団法人となって第2期の理事会が2018年5月に誕生しました。第2期会長として、一言ご挨拶をさせていただきます。

臨床心理士とは、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する心理専門職のことです。1988年に臨床心理士の有資格者が初めて誕生して今年(2018年)で30年を迎えることになりましたが、これまで、わが国でこの領域をずっとリードしてきた資格です。

資格認定協会のホームページには、以下のように臨床心理士の専門性が記されています。

「臨床心理士は、人(クライエント)にかかわり、人(クライエント)に影響を与える専門家です。しかし、医師や教師と異なることは、あくまでもクライエント自身の固有な、いわばクライエントの数だけある、多種多様な価値観を尊重しつつ、その人の自己実現をお手伝いしようとする専門家なのです。」

この宣言は、私たち臨床心理士の領域横断的な活動を支える理念をよくあらわしていると思います。専門細分化が進むこの現代社会の中で、その社会に暮らす私たち一人一人は、細分化された社会の機能に分断されそうになりつつも、一人一人がこの社会と全体的にかかわり、一個の人生を営んでいます。一人一人の国民がそれぞれの人生を営むこと、そのお手伝いをすることが私たちの専門性であり、そこには医師でも教師でもない独自の視点をその本質において備えています。

そして、だからこそ、教育、医療・保健、福祉、司法・矯正、労働・産業等の多領域での人々の暮らしの支援に携わることができるのです。

私たちは京都府における臨床心理士の団体として、京都府下に暮らす皆様に安心して心理的支援を提供できるよう、専門家としての会員の倫理意識、専門技術をつねに高め、向上していく所存です。


一般社団法人京都府臨床心理士会会長

濱野 清志

[上記ご挨拶と合わせて、本会ニューズレター通巻62号(2018年9月28日発行)掲載の本会会員に向けての会長就任挨拶の内容を、以下に会長挨拶として掲載いたします。]

京都府臨床心理士会が2017年に一般社団法人となって以後、今回が初めての選挙で、第2期の理事会が2018年5月に誕生しました。第2期会長として、一言ご挨拶をさせていただきます。

臨床心理士は、1988年に公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会(以下、資格認定協会)が認定する初めての有資格者誕生から2018年の今年でまる30年を迎えることになりました。文部科学省のスクールカウンセリング制度への参画、度重なる災害被災者への心理支援活動の実践などは言うに及ばず、それぞれの領域での地道な心理臨床活動がこの30年の歩みをしっかりと支えてきたのであり、個々の臨床心理士の努力は、この社会の中での心理専門職の必要性が理解される、そんな時代を生み出しました。

この30年は、臨床心理士が、臨床心理士とは一体何者か、そのことを懸命に模索し、そのアイデンティティを構築しようとしてきた年月でもあったのです。そこから、ようやく、民間資格ではなく、国家資格の心理専門職を形作るところまでやってきた、それがいま私たちが置かれている状況です。そして、いま、この時期、あらためて私たちが形づくってきた臨床心理士としての専門性のもつアイデンティティをしっかりと見つめなおす時が来ています。

それはどうしてか。現在、私たち心理専門職の間では、新たに誕生した国家資格の公認心理師をめぐって、いろいろと取りざたされることが多くなっています。とりわけ、臨床心理士会は、この30年にわたる私たちの活動が後押しをする形でこの国家資格が誕生したわけですから、その動向と、そして私たち臨床心理士の立ち位置について、あらためてしっかりと考えねばならない時が来ているといえるでしょう。

国家資格として成立した公認心理師は、私たち臨床心理士の多くが取得していくことになるでしょうし、その意味でも、これからこの資格を育てていき、よりよい心理専門職を構築していくことに私たちも寄与していくことになります。

しかし、高度専門職業人としての臨床心理士の理念が、公認心理師資格の整備にあたってその最適なモデルとして参照されたものであることは間違ないことですが、当然のことですが公認心理師イコール臨床心理士ではありません。国家資格になるということは、国の制度の中にこれを組み入れるということであって、「公」という観点から人々の暮らしを守る様々な法制度の中の一つとして位置付けられます。

公認心理師は、この観点からの心理専門職の構成となります。これに対して、臨床心理士の立ち位置を資格認定協会の説明を参考に少し見ておきたいと思います。

資格認定協会のホームページには、以下のように臨床心理士の専門性が記されています。

「臨床心理士は、人(クライエント)にかかわり、人(クライエント)に影響を与える専門家です。しかし、医師や教師と異なることは、あくまでもクライエント自身の固有な、いわばクライエントの数だけある、多種多様な価値観を尊重しつつ、その人の自己実現をお手伝いしようとする専門家なのです。」

すなわち、臨床心理士は徹底して「私」の世界に寄り添っていくということの宣言です。医師で臨床心理士である人もいますし、教師で臨床心理士である人もいますが、それはやはり、この徹底した「私」の尊重からそれぞれの専門性を見直すことによって、それぞれの専門性をより良いものにしようという思いがあるからなのではないでしょうか。その意味で、公認心理師になる人も、その立場から臨床心理士となることを選択する人が生まれるだろうと思います。

このように資格認定協会の宣言は、私たち臨床心理士の領域横断的な活動を支える理念をよくあらわしていると思います。専門細分化が進むこの現代社会の中で、その社会に暮らす私たち一人一人は、細分化された社会の機能に分断されそうになりつつも、一人一人がこの社会と全体的にかかわり、一個の人生を営んでいます。一人一人の国民がそれぞれの人生を営むこと、そのお手伝いをすることが私たちの専門性であり、そこには医師でも教師でもない、独自の視点をその本質において備えています。

そして、だからこそ、教育、医療・保健、福祉、司法・矯正、労働・産業等の多領域での人々の暮らしの支援に携わることができるのです。

したがって、資格認定協会からいち早く「これまでの社会的な信用と実績を堅持し、これからも『臨床心理士』を堅持」すると昨年(2017年)の11月19日付の会員へのお知らせがありましたように、これまで進めてきた臨床心理士としての活動は、私たち京都府臨床心理士会においてもこれまで通りに進めていくことに何ら変わりはありません。

ちなみに、資格認定協会は、この(2018年)6月、これまで長きにわたって会長としてかかわってくださっていた元内閣総理大臣、森喜朗先生が名誉会長に移り、臨床心理職の資格問題にずっとかかわってこられた衆議院議員の河村建夫先生が会長となられました。

30年の節目を迎えて、この時代の臨床心理士の役割を会員の皆さまとともに新たに創造していきたいと思います。

一般社団法人京都府臨床心理士会 会長

濱野 清志